栄養のコト、メモるわ

栄養についての文献、研修で勉強したこと、ここでぶちまけるわ。 間違ってること書いとったら遠慮なく言うてや。

脳卒中後の嚥下障害スクリーニング (2023/12/8)



管理栄養士と嚥下障害の関連性

管理栄養士は、脳卒中患者の栄養状態の評価と管理に不可欠な役割を果たします。特に、脳卒中による嚥下障害は、患者の栄養摂取に大きな障壁となり得ます。嚥下障害の早期発見と適切な管理は、患者の栄養不良や脱水のリスクを低減し、全体的な回復プロセスをサポートします。このような背景から、管理栄養士は、嚥下障害のリスク評価と介入計画の立案において重要な役割を担っています。

脳卒中後の嚥下障害スクリーニングの重要性

嚥下障害は、脳卒中の患者に頻繁に見られる合併症であり、その早期診断と管理は患者の健康と回復の質に直接影響を及ぼします。嚥下障害を早期に特定し、適切な介入を行うことで、誤嚥による肺炎や栄養不良のリスクを軽減することができます。この論文は、このようなスクリーニング方法の診断精度を評価し、臨床現場での嚥下障害管理の質を向上させるための知見を提供しています。

研究の概要:

「Screening for aspiration risk associated with dysphagia in acute stroke
 (Cochrane Database Syst Rev., 2021)」


脳卒中は嚥下機能に影響を及ぼすことが多く、これにより食事や飲み物が気道に入り込むリスクが生じます。これは窒息、胸部感染、栄養不良、脱水、リハビリテーションの遅延、不安やうつ病のリスク増加、病院滞在期間の延長、介護施設への転院の可能性増加、死亡リスク増加につながる可能性があります。嚥下障害の早期発見と管理はこれらの問題のリスクを軽減します。

研究の目的

この研究の主要目的は、急性脳卒中患者における嚥下障害に関連した誤嚥のリスクを検出するためのベッドサイドスクリーニングテストの診断精度、感度、特異度を決定することです。

方法論

この研究は、複数の観察研究を含むシステマティックレビューです。主に脳卒中を経験した成人患者を対象に、看護師や他の医療専門家が実施するベッドサイドスクリーニングツールを、専門家による評価や機器を使用した評価と比較しました。

主要評価項目:

嚥下障害に関連する誤嚥のリスクを検出するためのスクリーニングテストの診断精度、感度、特異度。

副次評価項目:

患者の人口統計学的特性(例:年齢、性別)、脳卒中後の時間経過、嚥下障害の定義、看護師の訓練水準、研究の質、テストの種類と閾値、参照テストの種類。

主要な結果

  • 研究は25件の研究をレビューし、3953人の参加者と37種類のスクリーニングテストを含みました。
  • 水のみを使用するスクリーニングテストの感度と特異度は、それぞれ46%から100%、43%から100%の範囲でした。
  • 水と他の一貫性を用いたテストでは、感度と特異度はそれぞれ75%から100%、69%から90%の範囲でした。
  • 他の方法を使用するテストでは、感度と特異度はそれぞれ29%から100%、39%から86%の範囲でした。

論文からの重要な引用

「単一の研究において100%の感度と特異度を持つ低リスクのバイアススクリーニングツールは確認できませんでした。」

研究の限界

異なる研究間での嚥下障害の定義の違いや、看護師の訓練水準の変動も、結果に影響を与える可能性があります。

結論と臨床への意義

このレビューは、単一の高精度な嚥下障害スクリーニングツールの存在を確認することはできませんでしたが、今後の高品質な研究の必要性を提唱しています。これらの結果は、臨床現場での嚥下障害の管理とスクリーニングの改善に向けた基盤を提供し、管理栄養士を含む医療専門家が嚥下障害の早期発見と介入の重要性を理解するための一助となるでしょう。

 

ヴィーガンの食事は確かに体重は減る:管理栄養士の複雑の立場から(2023/12/7)

管理栄養士のジレンマ

私たち管理栄養士は、食事と健康の関係を深く探求します。今日取り上げる研究は、植物ベースの食事と体重減少の関係を明らかにするものです。個人的には、ビーガン食を一概に推奨する立場にはありませんが、肥満患者の体重減少に関しては、このアプローチが持つ潜在的な利点を認めざるを得ません。

植物ベースの食事:体重減少への新しい選択肢

この研究は、植物ベースの食事が実際に体重減少にどのように貢献するかを探ります。私たちの食生活に新しい選択肢を提供する発見ですが、私はこの食事スタイルを全ての患者に適用することには慎重です。しかし、科学的な証拠に基づき、特定の状況下ではこのアプローチを検討することも重要です。

エビデンスの紹介

体重管理のために、特に肥満患者において、野菜中心の食事が効果的であるというエビデンスは存在します。この研究は、ビーガン食が体重減少に有効である可能性を示しており、これは私たちの臨床実践において無視できない情報です。ただし、それが全ての患者にとって最適な選択であるとは限りません。

管理栄養士としてのアプローチ

私たちの仕事は、患者一人ひとりのニーズに合わせた栄養指導を提供することです。植物ベースの食事が肥満患者の体重減少に寄与する可能性があるという事実は、私たちが患者のケースバイケースで検討すべき選択肢の一つです。重要なのは、個々の健康状態、栄養ニーズ、食生活の好みに寄り添ったアプローチを取ることです。

研究の概要:

論文タイトル: "Does diet quality matter? A secondary analysis of a randomized clinical trial" (European Journal of Clinical Nutrition, 2023)

この研究の背後には、一つの大きな疑問があります。それは、「植物ベースの食事が本当に体重減少に影響するのか?」ということです。この答えを探るため、研究者たちは、肥満成人を対象にした実験を行いました。彼らの努力が、私たちに新しい知見をもたらしています。

研究の目的

この研究は、植物ベースの食事が、どのようにして体重減少に貢献するのかを明らかにすることを目的としています。

 

研究設計の概要

この研究は、ワシントンD.C.で2017年から2019年にかけて行われたランダム化比較試験です。CONSORT報告ガイドラインに基づいて設計され、Chesapeake Institutional Review Boardの承認を受けました。全参加者は書面による同意を提供しました。

参加者の特性

肥満成人244名がランダムにビーガン群と対照群に割り当てられました。ビーガン群は低脂肪のビーガン食を、対照群は通常の食生活を続けるよう指示されました。

主要評価項目:

体重、PDI、hPDI、uPDIの変化。

副次評価項目:

エネルギー摂取量、マクロ栄養素の摂取、体組成の変化。

主要な結果

  • ビーガン群では平均体重が5.9kg減少し、主に脂肪質の減少によるものでした。
  • PDI、hPDI、uPDIのスコアはビーガン群で増加し、これらのスコアの増加は体重減少と有意に相関しました。
  • ビーガン群では果物、野菜、全粒穀物、豆類のスコアが有意に増加し、体重減少と負の相関が見られました。
  • 肉、植物油、甘いものの摂取は体重増加と正の関連がありました。

論文からの重要な引用

"動物性製品および植物油の消費を最小限に抑えることは、肥満成人における効果的な体重減少戦略である可能性が示唆される。"

研究の限界

本研究の限界として、食事データが自己報告に依存しており、参加者は自発的な志願者であるため、一般人口を代表していない可能性が指摘されます。

研究の結論

この研究は、植物ベースの食事が体重減少に寄与する可能性を示唆しています。特に、動物性製品および植物油の消費を減らすことが、効果的な戦略であると強調されています。私の立場としては、ビーガン食を一般的に推奨することには慎重ですが、科学的根拠に基づき、特定の状況下での肥満治療において、野菜中心の食事の可能性を認めざるを得ません。

臨床的意義

この研究により、肥満治療や栄養指導において、植物ベースの食事を積極的に取り入れることの重要性が示されています。しかし、私のアプローチとしては、全ての患者にビーガン食を推奨するわけではありません。むしろ、肥満患者に対して体重減少の手段として、野菜中心の食事を検討することは、一つの有効な選択肢であると捉えています。各患者の個別のニーズに応じた、柔軟な栄養指導が重要であり、この研究はそのための一つのエビデンスを提供してくれます。

ビタミンDとCOVID-19 (2023/12/6)

ビタミンDサプリメントがCOVID-19に与える影響

私たち栄養士にとって、栄養素が人体の健康に及ぼす影響には非常に興味があるものです。特に、ビタミンDは免疫系の正常な機能を支える重要な役割を担っています。COVID-19パンデミックが世界中で大きな影響を及ぼす中、ビタミンDがこの新型ウイルスに対する予防や治療にどのような効果を持つのかは、医学的にも栄養学的にも非常に重要なテーマとなっています。

ビタミンDSARS-CoV-2(COVID-19)感染症

ビタミンDSARS-CoV-2、いわゆるCOVID-19の予防や治療に有効かどうかについては、これまで様々な研究が行われてきました。しかし、その結果は一様ではありません。この問題に光を当てようとした最新の研究が、ランダム化比較試験のメタアナリシスを通じて、ビタミンDサプリメントの役割を探求しています。

研究の概要:

「The role of vitamin D in the prevention and treatment of SARS-CoV-2 infection: A meta-analysis of randomized controlled trials (Clinical Nutrition, 2023)」

 

この研究は、ビタミンDがCOVID-19の予防と治療においてどのような役割を果たすかを探るために行われました。ビタミンDが免疫系に及ぼす影響は以前から知られていますが、COVID-19に対する具体的な効果については明らかにされていませんでした。

研究の目的

ビタミンDサプリメントがCOVID-19の予防と治療に与える効果を調査し、ランダム化比較試験の結果を分析することで、その有効性を評価する。

方法論

この研究では、ランダム化比較試験のメタアナリシスが採用されました。この方法は、様々な研究結果を集約して一般化可能な結論を導き出すのに適しています。研究対象はCOVID-19患者で、ビタミンDサプリメントの摂取が彼らの病状にどのような影響を与えるかが調査されました。

主要評価項目:

ICU入院率
人工呼吸器の必要性
死亡率

副次評価項目:

病院滞在期間
ICU滞在期間

主要な結果

ビタミンDサプリメントは、COVID-19患者のICU入院率を減少させる可能性がある。
人工呼吸器の必要性も同様に減少する可能性が示唆された。
死亡率については、ビタミンDサプリメントの効果は統計的に有意ではなかった。
病院滞在期間とICU滞在期間に関しては、有意な差は見られなかった。

論文からの重要な引用

ビタミンDサプリメントは、特にビタミンD不足の患者において、COVID-19の重症化を防ぐ可能性がある」

これは、ビタミンDが免疫系に対して有益な影響を与え、COVID-19の重症化を抑制する手段となり得ることを示唆しています。

研究の限界

この研究の限界としては、ビタミンDの投与量や患者の基礎疾患の違いなど、個々の研究の異なる要因が結果に影響を与えている可能性があります。また、研究対象が広範囲にわたるため、特定の集団に対する効果の一般化には慎重である必要があります。

結論と臨床への意義

結論として、ビタミンDサプリメントはCOVID-19の重症化を防ぐ可能性があり、特にビタミンD不足の患者においてその効果が期待できます。この発見は、COVID-19の予防策や治療法の一環として、ビタミンDサプリメントの使用を検討する重要な情報を提供します。

 

肝臓病のリスクを減らすためにはどうしたらいい?社会栄養学の視点から考える(2023/12/5)



皆さんは、肝臓病と聞いてどのようなイメージを持ちますか?

アルコールや薬物の乱用によるもの?それも一部ではありますが、中にはメタボリックシンドロームに関連した脂肪肝という種類もあります。これは、肝臓に過剰な脂肪が蓄積し、炎症や線維化を引き起こす病気で、肥満や糖尿病、高血圧、高脂血症などの代謝異常と密接に関係しています。

 

世界では脂肪肝の人は増加傾向にある。

脂肪肝は、世界中で増加する健康問題です。豊かな国でも貧しい国でも見られ、肝臓の機能低下だけでなく、心血管疾患、腎臓病、認知症などの全身的な合併症のリスクを高めています。この問題に対処するには、生活習慣の改善が不可欠ですが、個人の努力だけでは足りません。社会的な支援や環境の整備も必要とされています。この点で、私たち管理栄養士は社会栄養学の原則を理解し、応用することが重要になります。

社会栄養学とは、食と栄養に関する社会的な問題や現象を分析し、解決策を提案する学問分野です。

社会栄養学は、

  • 食のアクセスや利用
  • 食の意味や価値
  • 食の政策や制度
  • 食の権利や正義

など、多様な視点から食に関わる人々の健康や福祉を考えます。

肝臓病の食事療法に社会栄養学を取り入れる

今回のテーマは、肝臓病の予防と治療に社会栄養学の原則を取り入れることの重要性ですが、具体的にはどのようにすればいいのでしょうか?

そのヒントを与えてくれるのが、Nature Foodに掲載された今回の論文です。この論文は、オーストラリアのモナシュ大学の栄養学者や医師、社会学者など、多様な専門分野の研究者によって執筆されています。彼らは、脂肪肝の予防と管理に関する最新の研究や文献を総合的に分析し、社会栄養学の視点から提言を行っています。

この論文は、社会栄養学の分野における先駆的なものであり、脂肪肝の予防と管理に関する新しい知見や方針を提供しています。この論文の内容を、私達管理栄養士がどのように活用できるか、また、どのような課題や障壁があるかを、以下に紹介したいと思います。

 

研究の概要:

「Social nutrition principles for the prevention and management of nonalcoholic fatty liver disease (Nature Food, 2023)」

 

 

この論文では、非アルコール性脂肪肝病(NAFLD)の予防と管理に社会栄養学の原則を適用することの重要性と有効性について論じています。社会栄養学の原則とは、食と栄養に関する社会的な問題や現象を分析し、解決策を提案する学問分野です。NAFLDとは、肝臓に過剰な脂肪が蓄積し、炎症や線維化を引き起こす病気で、メタボリックシンドロームに関連しています。NAFLDの予防と管理には、生活習慣の改善が必要ですが、これには、個人の努力だけではなく、社会的な支援や環境の整備が必要です。

 

研究の目的

この研究の目的は、社会栄養学の原則をNAFLDの予防と管理に応用することで、どのような効果や利益が得られるか、また、どのような課題や障壁があるかを明らかにすることです。

 

社会栄養学の原則とは何か?

社会的な問題や現象の分析と解決策の提案:例えば、特定の地域でなぜ栄養失調が問題になっているのか、その原因を多角的に分析し、実用的な解決策を提案することです。
食のアクセスや意味の多様性への注目:食品へのアクセスが不平等である場合や、文化的、宗教的な理由で特定の食品が重要視されるような状況を理解し、それに対処する方法を考えます。
社会的・環境的・経済的・政治的な要因の考慮:個人の食選択は、社会的な影響や経済状況、環境問題、政治的な決定によって大きく左右されるため、これらの要因を考慮することが重要です。
食と栄養の不公平や不平等への対応:特定の集団が栄養不足に陥りやすい理由を理解し、これを改善するための政策やプログラムを提案します。
多様な利害関係者の声の尊重と協力の促進:地域社会のメンバー、政策立案者、栄養専門家など、食と栄養に関わるさまざまな人々の意見を聞き、彼らとの協力を促進します。
科学的知識と文化的・倫理的価値の尊重:栄養科学の知識はもちろんのこと、地域の文化や伝統、倫理的な観点も考慮に入れ、栄養政策やプログラムを設計します。

 

研究の方法

この研究では、以下の4つのステップで社会栄養学の原則をNAFLDの予防と管理に適用しました。

  • ステップ1:
    NAFLDの発生と進行に関与する社会的要因を特定する。社会的要因とは、個人の健康に影響を与える社会的・環境的・経済的・政治的な要因のことです。例えば、収入や教育、職業、居住地、文化、ジェンダー、人種などが社会的決定要因に含まれます。
  • ステップ2:
    社会的決定要因に基づいて、NAFLDの予防と管理に必要な社会栄養学的介入を提案する。社会栄養学的介入とは、社会的要因に対応して、食と栄養に関する社会的な問題や現象を改善するための施策や活動のことです。例えば、食のアクセスや利用を改善するための食品配給や補助金、食の意味や価値を高めるための食育やコミュニティづくり、食の政策や制度を改革するための法律や規制、食の権利や正義を守るためのアドボカシーや運動などがSNIに含まれます。
  • ステップ3:
    社会栄養学的介入の実施に必要なステークホルダーを特定する。ステークホルダーとは、社会栄養学的介入に関心や影響を持つ人々や組織のことです。例えば、NAFLDの患者や家族、医療従事者、栄養士、教育者、研究者、政策立案者、メディア、市民団体、産業界などがステークホルダーに含まれます。
  • ステップ4:
    社会栄養学的介入の効果や利益、課題や障壁を評価する。社会栄養学的介入の効果や利益とは、社会栄養学的介入がNAFLDの予防と管理に及ぼす影響や成果のことです。例えば、NAFLDの発生率や重症度、合併症の発生率や死亡率、生活の質や満足度などが効果や利益に含まれます。社会栄養学的介入の課題や障壁とは、その実施や継続に困難や障害となる要因のことです。例えば、資金や人材、技術、情報、協力、信頼、意識、慣習などが課題や障壁に含まれます。

 

研究の結果と提言:

非アルコール性脂肪肝病(NAFLD)は、私たちの健康に影響を与える多くの要因の一つとして最近注目されています。この病気の背後にあるのは、ただの生活習慣の問題だけではなく、社会的決定要因の複雑な網です。考えてみてください。収入が低く、健康的な食事へのアクセスが限られた家族がいます。この家族には、食事が高カロリーで栄養不足になりがちで、NAFLDのリスクが高まる可能性があります。この状況は、単に個人の選択の結果ではなく、彼らの居住環境、教育レベル、さらには文化やジェンダーなど、さまざまな社会的要因によって形成されています。

これに対処するためには、個人レベルの医療的介入だけでなく、社会栄養学的介入が重要です。これは、社会的決定要因に対応して、食と栄養に関する社会的な問題や現象を改善するための施策や活動です。例えば、食のアクセスや利用を改善するための食品配給や補助金のようなものです。これらの介入は、NAFLDの予防と管理において根本的な原因や問題を解決する可能性があり、疾患の発生を減らすことに寄与します。

ステークホルダーは、このような社会栄養学的介入の実施に不可欠です。彼らは、非アルコール性脂肪肝病の患者や家族、医療従事者、栄養士、教育者、研究者、政策立案者、メディア、市民団体、産業界など、多岐にわたります。ステークホルダーは、資源や情報、技術、ネットワーク、権力、影響力などを提供し、共通の目標や利益、価値観、信念を共有することで、より効果的な介入が可能になります。

社会栄養学的介入の効果や利益は、多面的であり、長期的です。これらの介入は、非アルコール性脂肪肝病の予防と管理に限らず、他の慢性疾患や全体的な健康や福祉にも及びます。短期的な成果だけでなく、長期的な変化や持続性も考慮する必要があります。しかし、これらの介入の

課題や障壁は、多様であり、複雑です。それらは、社会的決定要因や社会栄養学的介入やステークホルダーの特性や関係によって異なります。単純な問題ではなく、複雑な問題であることを認識することが重要です。

このように、社会栄養学的介入は、NAFLDの予防と管理において、個人の医療的介入や栄養的介入と補完的かそれ以上の役割を果たすことができるのです。私たち一人一人が、社会的決定要因について理解し、これに対する具体的な行動を取ることが、健康な社会を築く鍵となります。

 

結論

結局のところ

「非アルコール性脂肪肝病(NAFLD)の予防と治療には、単に個人の生活習慣を改善するだけでは不十分であり、社会的決定要因に対応する社会栄養学的介入が不可欠です。私たち一人一人がこれらの要因に対する理解を深め、具体的な行動を取ることが、健康な社会の構築に向けた重要な一歩となります。」

睡眠時間が短いと食生活が荒れる (2023/12/4)

管理栄養士と睡眠・栄養摂取の関連性の重要性

私たち管理栄養士は、健康を維持するためには栄養バランスの取れた食事が重要であることを知っています。しかし、睡眠の質と量が健康に及ぼす影響についても、同じくらい注意を払うべきです。睡眠と食生活の関連性を探る研究は、まだ初期段階にありますが、この分野の理解を深めることは、生活習慣病の予防や健康管理の新たな視点を提供する可能性があります。

睡眠不足と食生活の変化:関連性の探究

「睡眠不足が人々の食生活にどのような影響を与えるのか」という問いは、多くの研究者の好奇心を刺激しています。明確な因果関係が確立されているわけではありませんが、睡眠時間と食生活との間には興味深い関連性が存在することが示唆されています。

 

研究の概要:

「Short Sleep Duration and Dietary Intake: Epidemiologic Evidence Mechanisms and Health Implications (Advances in Nutrition, 2015)」

 

研究の背景

この論文では、短い睡眠時間が私たちの食事摂取にどのように関連しているかに焦点を当てています。例えば、遅くまで起きていると翌日にスナックや甘いものを無意識に摂りがちになる経験は、関連性を示唆している可能性があります。

研究の目的

研究者たちは、睡眠時間の短さが日常の食事摂取にどのような影響を与えるか、科学的視点から探求しました。
また、睡眠不足と肥満や糖尿病などのリスクとの関連を理解しようと試みましたが、因果関係を断定するにはまだ更なる研究が必要です。

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腸と心の関係を考える―過敏性腸症候群と精神的な共病の多面的な治療法 (2023/12/3)

過敏性腸症候群と管理栄養士の関わり

私達管理栄養士は、食事や栄養の管理を通じて、患者さんの健康をサポートする専門家です。しかし、食事や栄養だけではなく、心の健康も患者さんの体調や生活の質に大きな影響を与えます。特に、過敏性腸症候群IBS)という病気においては、心の健康が重要な役割を果たしています。IBSは、腹痛や下痢、便秘などの消化器の症状を繰り返し起こす病気で、世界の5~10%の人が罹患しています。IBSの患者さんの約3分の1は、不安やうつなどの精神的な症状も併せ持っています。消化器の症状と精神的な症状は、IBSの患者さんの医療利用や生活の質に影響を与えますが、精神的な症状の方がより重要な要因であることがわかっています。このように、IBSは腸と心の関係を象徴する病気であり、私達管理栄養士にとっても、食事や栄養のみならず、心の健康にも配慮した治療法を提供することが求められています。

消化器の症状を栄養で、心の症状を心理療法

今回のブログでは、IBSと精神的な共病(不安やうつなど)を持つ患者さんの治療法について、最新のレビューを紹介します。この論文は、消化器科、栄養科学、心理学の専門家が共同執筆したもので、IBSと精神的な共病の患者さんの臨床評価や治療法の調整について、多面的な視点から提言しています。

この論文は、IBSの治療において、消化器の症状を栄養で、心の症状を心理療法で対処するという、統合的なケアモデルが最善の方法であると主張しています。しかし、実際には、IBSと精神的な共病の患者さんの治療には、さまざまな課題があります。例えば、精神的な症状の重症度や種類によって、適切な心理療法の選択や順序が異なります。また、心理療法のアクセスやコスト、患者さんの受け入れや継続性なども、治療の効果に影響します。このような課題に対処するために、この論文では、デジタルツールの活用や非専門家による介入などの方法も提案しています。

このレビューは、IBSと精神的な共病の患者さんの治療法に関する最新の知見をまとめたものであり、私達管理栄養士にとっても、参考になる内容です。

 

研究の概要:

Irritable bowel syndrome and mental health comorbidity — approach to multidisciplinary management (Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology, 2023)

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37268741/

 

研究の目的

  • このレビューの主な目的は、IBSと精神的な共病の患者さんの治療法に関する最新の知見をまとめることです。

  • 研究が解決しようとしている問題は、IBSと精神的な共病の患者さんの治療における課題やギャップを明らかにし、その対処法を提案することです。

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糖尿病患者の食事管理には自制力が必要? (2023/12/2)

 


糖尿病患者さんの食事療法と、その実行力

私達管理栄養士は、糖尿病患者の食事管理をサポートすることが重要な役割の一つです。

糖尿病患者は、血糖値のコントロールや合併症の予防のために、食事療法を守る必要があります。しかし、実際には、食事療法に従うことが難しいと感じる患者も多くいます。

食事療法に従うことが難しい理由の一つとして、自制力の低さが挙げられます。自制力とは、自分の衝動や欲求に抵抗する能力のことです。自制力が低いと、食べたいものを我慢できなかったり、食べ過ぎたりする可能性が高くなります。

自制心があれば食事療法は成功するのか?

今回取り上げるテーマは、糖尿病患者の自制力と食事療法への遵守度との関係についてです。自制力と食事療法への遵守度との関係は、これまでにもいくつかの研究で検討されてきましたが、その結果は一致していません。また、自制力は、主観的に自己評価する方法と、客観的に課題を用いて測定する方法とがありますが、どちらの方法が食事療法への遵守度とより関連しているかは明らかではありません。そこで、今回紹介する論文では、中国の糖尿病患者を対象に、自制力を主観的にも客観的にも測定し、食事療法への遵守度との関係を分析しています。この研究は、自制力と食事療法への遵守度との関係を多面的に検討した点で、先行研究とは異なります。

 

研究の概要:

「Investigating the relationship between inhibitory control and dietary adherence among patients with type 2 diabetes mellitus based on subjective and objective measures (Nutrition & Diabetes, 2023)」

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37989739/

この論文では、糖尿病患者の食事管理において、自制力がどのように影響するかを調べています。自制力は、実行機能の一つであり、自分の行動や思考を抑制する能力のことです。自制力は、食べ物に対する欲求や誘惑に抵抗することにも関係しています。糖尿病患者は、食事療法に従うことで、血糖値のコントロールや合併症の予防につながりますが、食事療法に従うことは、自制力が必要な行動です。しかし、糖尿病患者の自制力と食事療法への遵守度との関係は、まだ十分に明らかになっていません。

研究の目的

  • この研究の主な目的は、糖尿病患者の自制力と食事療法への遵守度との関係を、主観的な自己評価と客観的な課題を用いて測定することで、明らかにすることです。
  • また、自制力と食事療法への遵守度との関係には、年齢や性別などの人口統計学的変数や、血糖値やBMIなどの臨床的変数が影響する可能性があるため、これらの変数を考慮に入れることも目的の一つです。
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