栄養のコト、メモるわ

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肝臓病のリスクを減らすためにはどうしたらいい?社会栄養学の視点から考える(2023/12/5)



皆さんは、肝臓病と聞いてどのようなイメージを持ちますか?

アルコールや薬物の乱用によるもの?それも一部ではありますが、中にはメタボリックシンドロームに関連した脂肪肝という種類もあります。これは、肝臓に過剰な脂肪が蓄積し、炎症や線維化を引き起こす病気で、肥満や糖尿病、高血圧、高脂血症などの代謝異常と密接に関係しています。

 

世界では脂肪肝の人は増加傾向にある。

脂肪肝は、世界中で増加する健康問題です。豊かな国でも貧しい国でも見られ、肝臓の機能低下だけでなく、心血管疾患、腎臓病、認知症などの全身的な合併症のリスクを高めています。この問題に対処するには、生活習慣の改善が不可欠ですが、個人の努力だけでは足りません。社会的な支援や環境の整備も必要とされています。この点で、私たち管理栄養士は社会栄養学の原則を理解し、応用することが重要になります。

社会栄養学とは、食と栄養に関する社会的な問題や現象を分析し、解決策を提案する学問分野です。

社会栄養学は、

  • 食のアクセスや利用
  • 食の意味や価値
  • 食の政策や制度
  • 食の権利や正義

など、多様な視点から食に関わる人々の健康や福祉を考えます。

肝臓病の食事療法に社会栄養学を取り入れる

今回のテーマは、肝臓病の予防と治療に社会栄養学の原則を取り入れることの重要性ですが、具体的にはどのようにすればいいのでしょうか?

そのヒントを与えてくれるのが、Nature Foodに掲載された今回の論文です。この論文は、オーストラリアのモナシュ大学の栄養学者や医師、社会学者など、多様な専門分野の研究者によって執筆されています。彼らは、脂肪肝の予防と管理に関する最新の研究や文献を総合的に分析し、社会栄養学の視点から提言を行っています。

この論文は、社会栄養学の分野における先駆的なものであり、脂肪肝の予防と管理に関する新しい知見や方針を提供しています。この論文の内容を、私達管理栄養士がどのように活用できるか、また、どのような課題や障壁があるかを、以下に紹介したいと思います。

 

研究の概要:

「Social nutrition principles for the prevention and management of nonalcoholic fatty liver disease (Nature Food, 2023)」

 

 

この論文では、非アルコール性脂肪肝病(NAFLD)の予防と管理に社会栄養学の原則を適用することの重要性と有効性について論じています。社会栄養学の原則とは、食と栄養に関する社会的な問題や現象を分析し、解決策を提案する学問分野です。NAFLDとは、肝臓に過剰な脂肪が蓄積し、炎症や線維化を引き起こす病気で、メタボリックシンドロームに関連しています。NAFLDの予防と管理には、生活習慣の改善が必要ですが、これには、個人の努力だけではなく、社会的な支援や環境の整備が必要です。

 

研究の目的

この研究の目的は、社会栄養学の原則をNAFLDの予防と管理に応用することで、どのような効果や利益が得られるか、また、どのような課題や障壁があるかを明らかにすることです。

 

社会栄養学の原則とは何か?

社会的な問題や現象の分析と解決策の提案:例えば、特定の地域でなぜ栄養失調が問題になっているのか、その原因を多角的に分析し、実用的な解決策を提案することです。
食のアクセスや意味の多様性への注目:食品へのアクセスが不平等である場合や、文化的、宗教的な理由で特定の食品が重要視されるような状況を理解し、それに対処する方法を考えます。
社会的・環境的・経済的・政治的な要因の考慮:個人の食選択は、社会的な影響や経済状況、環境問題、政治的な決定によって大きく左右されるため、これらの要因を考慮することが重要です。
食と栄養の不公平や不平等への対応:特定の集団が栄養不足に陥りやすい理由を理解し、これを改善するための政策やプログラムを提案します。
多様な利害関係者の声の尊重と協力の促進:地域社会のメンバー、政策立案者、栄養専門家など、食と栄養に関わるさまざまな人々の意見を聞き、彼らとの協力を促進します。
科学的知識と文化的・倫理的価値の尊重:栄養科学の知識はもちろんのこと、地域の文化や伝統、倫理的な観点も考慮に入れ、栄養政策やプログラムを設計します。

 

研究の方法

この研究では、以下の4つのステップで社会栄養学の原則をNAFLDの予防と管理に適用しました。

  • ステップ1:
    NAFLDの発生と進行に関与する社会的要因を特定する。社会的要因とは、個人の健康に影響を与える社会的・環境的・経済的・政治的な要因のことです。例えば、収入や教育、職業、居住地、文化、ジェンダー、人種などが社会的決定要因に含まれます。
  • ステップ2:
    社会的決定要因に基づいて、NAFLDの予防と管理に必要な社会栄養学的介入を提案する。社会栄養学的介入とは、社会的要因に対応して、食と栄養に関する社会的な問題や現象を改善するための施策や活動のことです。例えば、食のアクセスや利用を改善するための食品配給や補助金、食の意味や価値を高めるための食育やコミュニティづくり、食の政策や制度を改革するための法律や規制、食の権利や正義を守るためのアドボカシーや運動などがSNIに含まれます。
  • ステップ3:
    社会栄養学的介入の実施に必要なステークホルダーを特定する。ステークホルダーとは、社会栄養学的介入に関心や影響を持つ人々や組織のことです。例えば、NAFLDの患者や家族、医療従事者、栄養士、教育者、研究者、政策立案者、メディア、市民団体、産業界などがステークホルダーに含まれます。
  • ステップ4:
    社会栄養学的介入の効果や利益、課題や障壁を評価する。社会栄養学的介入の効果や利益とは、社会栄養学的介入がNAFLDの予防と管理に及ぼす影響や成果のことです。例えば、NAFLDの発生率や重症度、合併症の発生率や死亡率、生活の質や満足度などが効果や利益に含まれます。社会栄養学的介入の課題や障壁とは、その実施や継続に困難や障害となる要因のことです。例えば、資金や人材、技術、情報、協力、信頼、意識、慣習などが課題や障壁に含まれます。

 

研究の結果と提言:

非アルコール性脂肪肝病(NAFLD)は、私たちの健康に影響を与える多くの要因の一つとして最近注目されています。この病気の背後にあるのは、ただの生活習慣の問題だけではなく、社会的決定要因の複雑な網です。考えてみてください。収入が低く、健康的な食事へのアクセスが限られた家族がいます。この家族には、食事が高カロリーで栄養不足になりがちで、NAFLDのリスクが高まる可能性があります。この状況は、単に個人の選択の結果ではなく、彼らの居住環境、教育レベル、さらには文化やジェンダーなど、さまざまな社会的要因によって形成されています。

これに対処するためには、個人レベルの医療的介入だけでなく、社会栄養学的介入が重要です。これは、社会的決定要因に対応して、食と栄養に関する社会的な問題や現象を改善するための施策や活動です。例えば、食のアクセスや利用を改善するための食品配給や補助金のようなものです。これらの介入は、NAFLDの予防と管理において根本的な原因や問題を解決する可能性があり、疾患の発生を減らすことに寄与します。

ステークホルダーは、このような社会栄養学的介入の実施に不可欠です。彼らは、非アルコール性脂肪肝病の患者や家族、医療従事者、栄養士、教育者、研究者、政策立案者、メディア、市民団体、産業界など、多岐にわたります。ステークホルダーは、資源や情報、技術、ネットワーク、権力、影響力などを提供し、共通の目標や利益、価値観、信念を共有することで、より効果的な介入が可能になります。

社会栄養学的介入の効果や利益は、多面的であり、長期的です。これらの介入は、非アルコール性脂肪肝病の予防と管理に限らず、他の慢性疾患や全体的な健康や福祉にも及びます。短期的な成果だけでなく、長期的な変化や持続性も考慮する必要があります。しかし、これらの介入の

課題や障壁は、多様であり、複雑です。それらは、社会的決定要因や社会栄養学的介入やステークホルダーの特性や関係によって異なります。単純な問題ではなく、複雑な問題であることを認識することが重要です。

このように、社会栄養学的介入は、NAFLDの予防と管理において、個人の医療的介入や栄養的介入と補完的かそれ以上の役割を果たすことができるのです。私たち一人一人が、社会的決定要因について理解し、これに対する具体的な行動を取ることが、健康な社会を築く鍵となります。

 

結論

結局のところ

「非アルコール性脂肪肝病(NAFLD)の予防と治療には、単に個人の生活習慣を改善するだけでは不十分であり、社会的決定要因に対応する社会栄養学的介入が不可欠です。私たち一人一人がこれらの要因に対する理解を深め、具体的な行動を取ることが、健康な社会の構築に向けた重要な一歩となります。」