栄養のコト、メモるわ

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重症患者における栄養サポートはちゃんと行われているのか?(2023/12/1)

栄養管理と重症患者の回復:私たち管理栄養士の役割

想像してみてください。もし、あなたの大切な人が病院で重症化してしまったら、その回復には何が必要でしょうか?実は、適切な栄養サポートがその鍵を握っています。重症患者はしばしば、栄養不足や筋肉減少のリスクに直面しており、これが回復の遅れや合併症のリスク増大につながることがあります。このような状況では、私たち管理栄養士が、個々の患者に合わせた栄養計画を策定し、適切な栄養介入を行うことで、患者さんの回復をサポートします。今回紹介する研究は、現代の重症患者ケアにおいて、栄養管理がどのように行われているか、その実際を明らかにしています。

重症ケアにおける栄養管理の現状と挑戦

重症患者に対する栄養管理は、患者さんの命を守るためにも非常に重要です。しかし、現場では、最新の科学的知見に完全に準拠した栄養療法が実践されているとは限りません。それでは、なぜそうなのでしょうか?この問いに答えるべく、イタリアの研究者たちは、重症患者の栄養管理に関する現実の状況を明らかにするための調査を行いました。彼らの研究は、現場の医療従事者が直面する現実と、理想的な栄養療法の間のギャップを探り、改善への道を探るものです。

 

研究の概要:

「Nutritional support and prevention of post-intensive care syndrome: the Italian SIAARTI survey (Journal of Anesthesia, Analgesia and Critical Care, 2023)」

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37936182/

 

研究の目的

重症患者の栄養不足は、治療成績に悪影響を及ぼすことが知られています。この研究は、イタリア全土の集中治療室における栄養管理の実際の状況を調査し、それが国際的な推奨事項とどう一致しているかを明らかにしています。研究チームは、この問題に深い関心を寄せ、病院や患者のために何ができるかを考える中で、この大規模な調査を実施しました。

 

方法論:

今回の研究は、イタリア全土の集中治療室(ICU)における栄養管理の現実を探るための全国規模のオンライン調査でした。この調査では、重症患者の栄養評価、管理、モニタリングの現状を深く理解し、国際的なガイドラインとの比較を試みました。

  • 研究設計:全国規模のオンライン調査
  • 対象:イタリアの集中治療室(ICU
  • 介入と比較:栄養管理プロトコルの適用と、国際ガイドラインとの比較
  • 主要評価項目:栄養リスク評価の実施、日々のカロリー摂取基準、栄養管理の方法
  • 副次評価項目:栄養管理のプロトコルの遵守率、栄養療法の開始タイミング


主要な結果:

  • 栄養リスク評価は、多くのICUで実施されていない。
  • 日々のカロリー摂取は、主に25kcal/kgの基準に基づいている。
  • 栄養管理に関するプロトコルは存在するが、実際の適用は限定的。
  • 栄養療法の開始は、入院後2日以内に多くのICUで行われている。


論文からの重要な引用:

この研究からは、ICUにおける栄養管理は、国際的な推奨事項と完全には一致していない」という重要な発見がありました。この発見は、栄養管理の実践における改善の余地を示唆しています。

研究の限界の指摘:

この調査は、自己報告に基づいているため、実際の臨床実践との間にズレがある可能性があります。また、回答したICUの種類や規模によるバイアスの可能性も考慮する必要があります。

結論と臨床への意義:

この研究は、重症患者の栄養管理における現実と理想とのギャップを浮き彫りにしました。臨床実践においては、国際的なガイドラインに基づく栄養管理の更なる適用と改善が必要です。これにより、重症患者の回復促進と合併症の減少が期待できます。

 

私のメモ

ICUにおける栄養管理の改善には、さまざまな関係者が一丸となって取り組む必要があると考えています。私自身が重視しているのは、次の4つの主要な役割です。

まず、ICUの医師と管理栄養士の役割についてです。私たちは患者の栄養状態の評価と栄養計画の策定において中心的な役割を果たしています。私たちは、栄養管理に関する最新のガイドラインを理解し、それを実践に移す責任があります。

次に、病院経営陣と政策立案者の役割です。これらの関係者は、必要な資源と設備の提供、教育プログラムの実施、標準化されたプロトコルの策定と実施において重要な役割を担っています。私は、彼らが栄養管理の改善が患者の回復と医療の質に与える影響を理解し、必要な投資を行うべきだと考えています。

また、看護スタッフの役割も重要です。ICUの看護スタッフは、日々の患者ケアにおいて栄養管理の重要な側面を担っています。彼らは、栄養状態のモニタリング、栄養介入の実施、患者の食事摂取の監視などに関与することが求められます。

最後に、医療教育機関の役割についてです。医学部や看護学校などの医療教育機関は、未来の医療従事者に対する栄養管理の教育を強化することで、臨床現場における栄養管理の質を向上させる役割を担っています。

これらの関係者が協力し、それぞれの分野で改善策を推進することで、ICUにおける栄養管理の質を高め、重症患者の回復を支援することが期待されます。